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プッシャー、憂鬱、終わり

cinema

 毎日が憂鬱だ、消えてしまいたい。
 お前には何もわからないだろう。何も感じることができないだろう。
 だから私たちは解り合えない。 それを知ることでしか、私たちの距離は埋まらない。




デンマークの鬼才、ニコラス・ウェンディング・レフン監督の代表作、「プッシャー」シリーズは、麻薬密売人(プッシャー)を描いたアウトローたちの映画だ。
レフン監督の他作品にも見られるとおり、クールで生々しく淡々としたバイオレンスシーンが突発的に、しかも計算高く挿入されており、飽きさせないし、
だらだらとしたドキュメンタリ風の日常性のストーリー展開かと思えば、リアリティと異常な緊張感が表裏に張り付く映像やキャスティングの妙は感嘆せざるをえない。

小難しい解説などは専門家に任せるとしても、やっぱりこーゆーイカレてるのに緻密に作られた暴力映画が大好きだ。
細かいところにグッとくるシーンが詰め込まれてる。キャスティングは素人俳優をオーディションで選んだとのことだが、だれもかれも雰囲気も喋りもベストマッチだ。
1に関しては主人公フランク役のキムと相棒トニーを演じたマッツ・ミケルセンのコンビが最高にバカ。ホモホモしい仲良しやり取りに観客を和ませて、金属バット殴打でいきなり氷水をかぶせるような残酷展開。店から出てきた返り血に濡れたフランクの目の焦点の定まらぬ表情などは見物です。ヤバイ。
元締めのミロと取り立て屋ラドヴァンの常軌を逸した冷酷劇場や、儚そうに見えてしたたかな恋人ヴィクとのやり取りに見るフランクのダメ男っぷりなど、絶望的に追い詰まっている晴れることのないやるせなさが土台になっていて、見ていると爽快感のなさがむしろ爽快という鬼畜映画なので、こーゆーのにハマると抜けだせないのだ。
音楽はロックやノイズやテクノなど、いかがわしさを増幅させるセンスが光っている。つーかカッコイイ。

続いて主人公をトニーに移した2は1より親子の確執、不幸な生い立ちなど、かなり泣ける要素も盛り込まれる。
1よりもトニーのクズさマヌケさ女々しさがクローズアップされ、「もう、どうしようもないほどバカ!!」と画面を割りたくなる(もしくは抱きしめたくなる)こと間違いなしだ。
不能男と乳児のふれあいの場面のたびに、何故男はこんなにも愚かで不幸なのか、世界の不条理が惜しみ無く突き刺さり、繰り広げられる究極の踏んだり蹴ったり人生がある種愛おしくさえある。
まあ一番好きなのは売春宿でのビッチ二人との絡みです。全裸!あとジャンキー娼婦に罵られる様が笑える。
にしても全身油性マジックの落書きにしか見えないタトゥーだらけ。酷い。マッツ・ミケルセンヴァルハラ・ライジングではけっこー激渋でイケてるんだけどそれを思うとマジで演技幅広いんじゃね。