「ハードロマンチッカー」

バイオレンスとかグロとかにおおかた耐性がついて久しいが、
そういう暴力描写を売りにした映画を見るにあたって個人的に注意しなければいけないことがある。
というのは、エログロナンセンス自体は好きなのだけど、
あんまり可哀想というか哀れな感じを強調されると、いやだなーと思う時があるんですね。


要するにやられる側がものすごい踏んだり蹴ったりな過去があるとか、やる側もものすごく葛藤しながら殺す犯すとか。
あとやられる側がやる側にまわるというか、復讐というか反逆というか立場が一転してしまう、っていうのは
最後のどんでん返しとしてありがちなんですが、
結局一番狂ってるのは被害者のほうでした!!っていう安易なオチもどうかなあ・・・とか。

(ぱっと思いつくのは、「血と骨」とか「冷たい熱帯魚」とか「息もできない」とかあと「フルメタル・ジャケット」とかもっとあると思うけど・・・)

暴力描写に一抹のやるせなさ?みたいなものが出てくると、
ちょっとどうしたら良いかわからなくなったりしませんかね。


そういうやるせなさを完全に売りにしている
痛々しい映画も嫌いじゃないんですけど、「リリイ・シュシュのすべて」みたいな。
あれはもう痛々しさを青春のキラキラに昇華してしまっているからね。

ケンタとジュンとカヨちゃんの国」なんかは今一歩昇華しきれずに可哀想感が先行してしまってるかなあ、とか思いながら見ました。



まあそういうココロ病み映画漬けの中で、やっぱりスカッとするバイオレンス映画が観たい!そうだろ?!
という君たちにこそ!
「ハードロマンチッカー」




この爽快感とピリッと感はけっこうありそうでなかったな、
という期待異常の出来でした。
予告とかB級感モロ出しですけど・・・

上で言ったような可哀想は全くなく、
(事故で死ぬ女の子ぐらいか?)
冒頭から幕切れまで、絶え間ない殴る蹴る殺す犯すの荒らし。
下関弁?の「〜ないっちゃ!」というドスが効いたというよりもむしろ可愛らしい感じに聞こえ、
不良たちも一世代剥けたな、という感じのオシャレさ。


松田翔太の格好も真っ黒なコートとズボンというのがえらく渋い。
チョケてていかがわしい印象と真面目さと優しさとプライドと焦燥感を良い感じにミックスされた
バランスの良い不良ヒーロー像としてなかなかはまっていたなと思いました。



シリアスすぎず笑いに走りすぎず、軽くも見れるし熱くもなれるそんな男臭いクールな作品。
雰囲気としては、かなり「トレインスポッティング」に近いテンションを感じます。あまりジレンマを表には出さないけどね。
社会的底辺の完全アウトローな若者たちの日常というか。
友情なのかなんなのか泥にまみれた関係というか。


細かいキャスティングにグッと来るのでそういう意味でも飽きさせなさとか、巧いなあ。
中村獅童の一人称「ボク」っていう胡散臭さはものすごい効果です。


あと無意味に真木よう子に包丁をもたせると怖い!www

ネタバレ↓

そうそう、ストーリーがごちゃごちゃしていてわかりにくいし
意味のない行動が多すぎるということは否めないのですが、
コインロッカーの中のものが指輪で、
それをトイレに流すシーン、けっこういいと思ったんですよね。
勝手な解釈かもしれないけど、庄司(ヤクザのおじさん)に対して、
「自分だけ純愛とかいってカッコつけてロマンに浸ってんじゃねえよ、いまさら死んで綺麗にまとまるなよ、おれはこれからも汚い掃き溜めの中であがいて生きていかなくちゃいけないんだから」
というような叫びが聞こえてきそうな気がしたのですが。

むしろ上手くストーリーになっていないぐらいのほうが不良マンガのマンネリを超えているように思ったんですけども、どでしょうか。